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2010年6月29日 (火)

アイドル

「おはよう、浜崎さん。どうしたの神妙な顔つきしちゃって」

隣席の木村香奈枝に声をかけられた。彼女は私より3期下の入社だが年齢は同じだ。大学を休学してイギリスに留学していたそうだ。明朗快活でスーパーモデル並みの身長である彼女は、普通にしていても目立つ存在なのだが、それに加えて誰もが振り返るほどの美貌の持ち主なのだ。会社の男どもはみな彼女のファンであり、私も何を隠そうそれらの男どものうちの一人だが、個人的に感じる彼女の魅力は顔かたちの外見ではなく、眼光鋭いその眼差しだと思う。どんなものでも見逃さない大きくて真っ黒な瞳は、まるで「あなたのことは全部お見通しよ」と語っているかのようで、彼女に睨まれたらたちまちひるんでしまう。そして彼女の美貌は私をたちまちひ弱な男へと化してしまう。

「あ、木村さん、おはよう。いや別に大したことないんだけどね」

「嫌だわ、久々の梅雨の晴れ間だっていうのに。パッと行きましょうよ、パーッと」

彼女にそう言われると、さきほどまで抱えていた不安感が嘘のように飛んで行ってしまった。そうだ、今日は久々の晴れだ。梅雨の季節独特の湿った陰気臭い日から久々に解放されるとっておきの晴れ間だ。そんな清々しい日のランチは、彼女を誘って外で弁当でも食べることにしよう。今夜は気乗りしない柏原との飲みだから、せめてそれまでは気分良く過ごしたい。

「ねえ木村さん、今日のお昼外で一緒に弁当でも食べない」

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