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2010年7月11日 (日)

広がる闇とへんてこスキップ

気のせいだとはわかっているのだが、今晩のことを考えれば考えるほど何か得体のしれない薄暗い闇のようなものが広がっていく。そして今も斜め向かいに座っている柏原からも同様な闇の広がりを感じるのだ。そしてその闇は自分の思考の限界をも超えて無限に広がっていく気がする。

(落ち着け、冷静に、冷静に。ただの気のせいだ。)

心の内側で広がっていく闇を振り払うため自分に言い聞かす。
しかしなぜ自分が柏原からの誘いに対して、そして彼に対してこうもネガティブな雰囲気を感じるのだろう。
この部に配属されて以来、彼とはあまり関わり合いがないとはいえうまくやってきているし、どちらかといえば彼には好感を持っていると言っていいはずである。冷静に考えれば、自分の考えすぎだということは分かっている。
とにかくあまり考えすぎるのは良くない。この妙な不安を消すためにも気持ちを仕事に切り替えよう。
今日もスケジュール通りにこなさなければいけない仕事がたくさんあるのだ。さあ、仕事に取り掛かろう。

予想に反して午前中の仕事は思っていたよりはかどった。来週発表予定のプレスリリースの原稿も書き終えることができたし、新しい広告のアイデアもいくつか浮かんで、午後には広告代理店に依頼できる形までまとめ上げることができた。
あの妙な闇のような感覚を振り払うように仕事に集中したおかげだろう。

「さあ、みなさんお昼に行きましょう!まだ11時50分ですけど、お弁当屋さんが混んじゃうしいいですよね?川島さん。」

香奈枝の声でもうお昼近くになっていることに気づく。

「もちろん。さあ柏原さん、浜崎さんお昼行きましょうか。」

ひょうきん者の課長はなんだか張り切っている。香奈枝とランチに行くのがうれしいのが見え見えだ。ステップの一つ多いへんてこなスキップまでしている。

(たかがランチなのに。なに鼻の下延ばしてんだか。)

と自分も香奈枝とのランチで一喜一憂していたことを棚に上げて、川島をちょっと軽蔑のまなざしで見てしまう。

しかしあのへんてこなスキップも不思議なもので、あきれながら課長を見ているとだんだんと楽しいランチになりそうな気がしてきた。

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